オリジナル獅子頭「GON」 開発の経緯

いい獅子頭は、買いたくても高くて手が出ない

「獅子舞を習ってみたいけれど、何十万円もする道具はなかなか買うことができない」獅子舞の講習を希望する多くのお客様から、何年もの間、幾度となく言われ続けていました。

伝統的な獅子舞用の獅子頭は、基本的に木彫りの一点ものです。さらに漆を塗り、金を貼って作り上げた獅子頭は、職人さんが腕によりをかけて作り上げた芸術品でもあります。「やるからには、いい物を使ってほしい」芸能に携わる人間としての、偽らざる気持ちです。

しかしながら、獅子舞という文化を普及する上では、この価格帯はユーザーにとって大きな壁となって立ちはだかっているのが実情でした。

獅子頭とは、いわゆる「頭」の部分のみです。さらに胴体用の幕を付け、鈴や毛を付けてはじめて一式が完成します。

一式を購入すると、比較的安いものでも20~30万円前後が相場です。「ちょっと獅子舞を習ってみたい」とご希望される方に「まずは買ってください」とはなかなか言えません。

獅子舞の指導の際には、所有する獅子頭を貸し出したり、ときには工作して作り上げることもありました。段ボール箱やプラスティックのバケツ、ティッシュペーパーの箱などを使い、それはそれでワークショップにもなって楽しいのですが・・・。

10年前から獅子舞の指導を始めましたが、なかなか継続した形にならないのはやはり道具の問題が大きいと感じました。そこで「どうにかして安く量産できないものか」とリサーチを始めたのはかれこれ5~6年前。

木・紙・プラスチックなど様々な業種のメーカーさんにご相談し、ことごとく門前払いされる日々。
「そんなもの作ったことがない」一様にお断りされました。

獅子頭の量産-常識を打ち破る挑戦

「どなたもやったことがない」のは当然でしたが、前例のないことに取り組んでくださる業者さんは皆無でした。まれに話を聞いて下さり、見積りを出してくださるメーカーさんもありました。ところがサンプル製作の時点で途方に暮れるような金額提示でした。「これなら普通に買ったほうが安い」「元を取るのにどれだけ売ればいいのか」と頭を抱えるしかありませんでした。

2017年には中央アジアのキルギス共和国に派遣され、2か月間アパートで生活しました。物価が安いので可能性があるかもしれない、と現地の木工職人にも交渉してみました。なかなかの腕前の方に巡り合えたのですが、いかんせん「仕事が遅い」。年に1頭、2頭の製作ペースでは量産ができるとは到底思えませんでした。

そんなある日、ネット検索をしていて造形作家の方に行きつきました。実物をお見せすると「これならうちで作れるよ」ようやく探していた人に巡り合えました。

サンプルで作っていただいた獅子頭はほどよい軽さでイメージ通りでした。金額的にも妥当と言えるものでした。しかし、ここでも壁にぶつかりました。

「量産はできない」とのことでした。

1頭ずつ手作業で作るので、単価が下げられないのです。それでも木彫り獅子よりは割安になりましたので、ためしに5頭ほど作っていただき、獅子舞教室の生徒さんにご提供しました。なかなかの好評はいただきましたが、造形作家さんがご高齢だったこともあり、それ以上の生産はできませんでした。

それでも、製作に向けた方法論がようやく見つかりました。あとは「この方法で実践できるメーカーさんを探す」ことに絞りました。そして、ようやく今回製作を依頼したメーカーさんにたどり着きました。

サンプルを作り、生徒さんにモニターになっていただきました。反応は上々。何より「軽い!」と好評。微調整をしながら、本生産にこぎつけました。

こうして紆余曲折を重ね、「構想5年」獅子頭の量産体制を整えることができたのでした。

このサンプルが出来上がった頃と時期を同じくして、タイミングよく生地屋さんにも出会いました。
印刷から縫製までを一貫してお願いできるメーカーさんに出会えたことで、開発は一気に加速しました。

既存の獅子頭との違い、ぜひ比べてみてください

一般の木彫り獅子頭と比べると、質感や高級感では劣っている点があると感じられるかもしれません。その点は重々承知しています。その上で、金額も含めて比べてみていただきたいです。「この金額で買えるのか」とご納得いただけると確信しています。軽さや握りやすさはとくに重視しましたので、女性でもご安心してお使いいただけます。

この獅子頭は獅子舞の【入門用】です

お求めやすい価格設定にしたことで「これならやってみたい」と思っていただけることを第一に考えました。獅子舞をはじめて取り組む方を想定して作っております。獅子舞を深めていく中で「もっといい獅子頭が欲しい」と思われたら、次のステップへと進んでいただければよろしいかと思います。

目指すのは「獅子舞」という文化が広がることです

日本各地に獅子舞は存在し、それぞれに豊かな文化として定着しています。一方で後継者不足の問題はどこにでも存在しているようです。とくに2020年はコロナ禍でどこも祭りが開催できず、芸能の存続がより危ぶまれています。

私たちは特定地域の芸能の伝承には携われませんが、広い意味で「獅子舞」という日本の伝統芸能を守りたいと考えています。獅子舞という芸能のすそ野を広げることで、いずれは「各地域に根付いた芸能や文化への興味関心」へと波及することを切に願っています。